NIGHT OCARINA NEWS

オカリナ エアーウェイの清掃に関して弊社の見解

雑誌Ocarina vol.37 に掲載された「自分でもできる Ocarinaの大掃除」の内容に関して弊社の見解をお伝えいたします。まず、同雑誌を出版しているアルソ出版株式会社様は、一定の調査・取材を行い広くオカリナの愛好家の皆様にとって有益とご判断された内容を掲載してくださったのだと思います。また、情報の出所と思われるテレマン楽器様も、同様の姿勢でご判断されていることと存じます。両者ともに、オカリナ普及や有益な情報発信のためにご尽力くださっている企業であり、この点、弊社の企業理念とも合致する事業を行ってくださっていると考えています。そして、友好的にお取引をさせていただいている企業様です。

飽くまで、私どもの見解です

これからお話しする弊社の見解は、飽くまで、弊社の見解であり、一方で、広くオカリナに関する事業を行っている上記企業様はじめ他社の皆様の経験やノウハウを尊重することに変わりはございません。弊社の見解も、また、1つの「考え方」としてお示しさせていただき、オカリナを愛好くださっている皆様のご判断のお役に立ちたいと願っております。様々な見解がございますが、複数の情報を基に愛好家の皆様が、個々のケースに合せてご判断いただきたくお願い申し上げます。

これからお話しすることの要点は、次のようなことになります。
長文ですので、情報整理のためにご参考としていただきたいと思います。

かつて弊社も推奨していた厚紙を使っての清掃

20年ほど前になりますが、弊社も、雑誌Ocarina vol.37 に掲載された「自分でもできる Ocarinaの大掃除」の内容と同様にエアーウェイを厚紙で清掃する方法を取説に掲載していました。しかし、「エアーウェイを厚紙で清掃したところ、オカリナの音が出なくなってしまった。」あるいは「出難くなってしまった。」というご相談を何件か受けました。原因は、厚紙で清掃する際、エアーウェイ内部も削れて、繊細な息の出口(吹き口の反対側)が広がってしまったからでした。

厚紙を使用して清掃する方法がオカリナにダメージを与えてしまう理由

オカリナは一般的に「素焼き」(焼成温度1,000℃以下)で製作されます。これは、古代の人々が製作していた土器と同様です。余談ですが、太古の時代からオカリナの原形である土笛はこのように製作されていて、この土笛から奏でられる音色に人々は神秘性を感じていたのだと思います。

話を戻します。日常使用される食器などの「焼き物」「陶磁器」は「素焼き」した後に、釉薬を塗って「本焼き」(焼成温度1300℃以上)します。すると表面がガラス状に変化して硬く仕上がります。一方、オカリナは、「本焼き」前の「素焼き」(焼成温度1,000℃以下)です。焼成温度が低いため、素材の結びつきが弱く、もろい一面があります。ですから、厚紙でも、エアーウェイにダメージを与え、汚れのみならず、素材自体を削り落としてしまうリスクがあるのだと考えます。

そこで、弊社は取説からオカリナを損壊してしまうリスクの高い「厚紙によるエアーウェイの清掃」の記述を削除しました。そして、後年、エアーウェイの汚れをできるだけ事前に防ぐために「NIGHTオカリナ専用クリーニングブラシ」を開発し販売開始しました。

釉薬仕上げのオカリナの普及

現在オカリナは、釉薬を施し焼成されているものも増えてきている点、併せて、お伝えしなければならないと思います。弊社はこのようなタイプのオカリナを製作していないので正確な情報は不明ですが、素焼きよりも焼成温度が高くなり、素材の結びつきが強くなると考えられます。しかし、音の品質を確保するため、従来より低い温度で効果が表れる釉薬を使用していることが多いと聞きます。釉薬を使って仕上げられたオカリナが厚紙に対してどれほど耐性があるか、私どもでは判断いたしかねます。もしかしたら、強い耐性があり、厚紙の清掃に耐えられるものもあるかもしれません。

オカリナのエアーウェイの汚れの正体

さて、エアーウェイの汚れに対してどのように対処したら良いか?についてですが、私たちは、そもそも、エアーウェイに汚れが付着しないためにどうしたら良いのか、という視点で考えました。そのためには、エアーウェイの汚れの正体は何か?を解明する必要があります。

息に含まれる水蒸気が原因?

エアーウェイに汚れが付着してしまうメカニズムは何でしょうか?最初に着目したのが「水」の存在です。汚れが目立つオカリナの現象として、水滴が溜まる、酷い場合には、エアーウェイから水が流れ出てきて、音が出難くなる、ということが起きていました。そこで「水」に着目しました。

オカリナを演奏する際に吹き込む息にはたくさんの水蒸気が含まれています。息は、外気に触れて冷やされると結露となって水滴が生じます。プラスチック製のオカリナでは、この水滴が溜まって音が出難くなることがあります。この現象は、リコーダーも同様ですが「水抜き」で対応します。

素焼きのオカリナはどうでしょうか?素焼きのオカリナもプラスチック製のオカリナと同様に息に混ざっている水蒸気が演奏を妨げるのでしょうか?答えは「ノー」でした。素焼きのオカリナを演奏する際も、当然息が結露して水滴が出ますが、プラスチック製と異なり、素焼きは十分に水分を吸収する力があります。そこで、息が冷やされる結露程度の水滴は、正常な陶器製(素焼き)のオカリナでは問題になりません。弊社でも、オカリナのエアーウェイ内部に霧吹きで水をかけるという実験を行いましたが、比較的短時間で水分を吸収してオカリナ演奏ができるように回復しました。また、念のため20日間継続して同様の実験を行いましたが、エアーウェイに汚れが付着するような現象も見られませんでした。

※「水抜き」= 歌口に指を当てて音が出ないようにして強い息で水滴を飛ばす作業

水分吸収力があるので水滴には強いオカリナ

このような実験から、水分吸収力があるのでオカリナは水滴に強いといえそうです。では、何が原因なのでしょうか。私たちは、エアーウェイの汚れの直接的な原因は「唾液」だと考えています。唾液は、純粋な「水」と異なり消化酵素など様々な成分が含まれています。エアーウェイ内部に付着し、乾燥すると膜状の汚れとなって残ってしまいます。この汚れは、悪い意味でエアーウェイの表面をコーティングしてしまうのです。すると、表面を覆われてしまった素焼きは本来の水分吸収力を失います。

悪循環による結末

表面を汚れで覆われてしまった素焼きは、水分を吸収する力を失い、通常の結露も吸収できなくなります。また、唾液による粘性で「水抜き」をしても水分が飛び難くなり、エアーウェイ内部に留まります。すると、エアーウェイ内部が長時間湿った状態になります。このような状態になると、保管場所の環境などで差はあると思いますが、いずれカビが生えてきます。黒い汚れの正体は、このようなカビであるという結論に達しました。まさに、「唾液」から端を発した悪循環です。


エアーウェイの汚れを防ぐ方法は?

直接的な原因が「唾液」なので、汚れの出方に個人差があります。なぜなら、オカリナを吹くとき、必ず「唾液」がエアーウェイに入ってしまう、という訳ではありません。しかし、エアーウェイに「唾液」が入ってしまい易い方にとって、画期的にそれを防ぐ方法がないのが現状です。私どもが考える防止対策は、

➀ オカリナを軽く持ち、リラックスして吹く
⓶ オカリナの吹き口を深くくわえこまない
⓷ タンギングの際「唾液」が入らないように発音する
⓸ 音を止めるとき、舌を直接吹き口に当てない

なかでも、➀は重要だと思います。オカリナを始めた当初、オカリナは割れ物ということもあり、どうしても力が入ってしまいます。だんだん慣れてくると、リラックスして吹けるようになると思います。「半年から1年くらいオカリナを続けてくださると大分リラックスしてオカリナを吹くことができるようになり、唾液も入りにくくなるようです。」とあるオカリナ講師の方から伺ったことがあります。

エアーウェイが黒く汚れてしまったら

掲載したお写真のように汚れが黒く表れてしまった場合、特に、厚紙を使ってエアーウェイを清掃することは危険だと考えます。理由は、もともと弱い素焼きですが、長時間湿気が多かったことの証拠となる黒い汚れ、恐らく、カビが生えてしまっている状態の場合、通常以上にエアーウェイ内部の素材はもろく、柔らかくなってしまっていることが考えられるからです。そのような状態で、厚紙を挿入して汚れを落とそうとした場合、汚れのみならず素材も一緒に削りとってしまうことになるでしょう。

この場合は「焼き直しクリーニング」をお勧めします。焼き直しは、オカリナを焼成した温度より低温で焼き直すことにより、元のオカリナに影響を与えずに、汚れのみ焼き払ってしまうクリーニング方法です。

「焼き直しクリーニング」は、有償のサービスです。費用がかかってしまう面がございます。しかし、エアーウェイを疵付けて壊してしまうリスクはなくなります。また、厚紙などを使った擦り洗いは、どうしても、汚れを完全除去できません。一方「焼き直しクリーニング」は、オカリナ本体に影響を与えない温度と言っても、600℃程度で再焼成するので汚れは全て燃えてなくなります。理論上は、新品のオカリナの状態に戻ります。

焼き直しクリーニングのご案内

演奏方法に加えて、エアーウェイの汚れを防止する方法

どの方も、大切なオカリナをエアーウェイの汚れから守りたいと思われるでしょう。最も有効な方法は「唾液が入らないように吹く。」です。が、これは、個人差があって、すぐ身につくものではありません。そこで、私どもがご提案したいのが「NIGHT オカリナ専用クリーニングブラシ」を使用しての予防的な清掃です。

エアーウェイに黒い汚れが現れたら擦り洗いは手遅れだと考えます

雑誌Ocarina vol.37「自分でもできる Ocarinaの大掃除」の記事で当ブラシについて「汚れ落としの効果は大きいものではありません。」と記載されていますが、商品コンセプトに相違があります。当ブラシは、黒くなってしまった汚れをゴシゴシ削り落とす道具ではありません。

繰り返しになりますが、黒い汚れが現れてしまったら、私どもは、擦り洗い、磨き洗いをするのは手遅れだと考えます。その場合は「焼き直しクリーニング」をお勧めいたします。

予防のためのこまめな清掃を推奨します

では、当ブラシの用途ですが、それは、オカリナ練習後、ブラシを優しく出し入れして、中に入ってしまったかもしれない異物や唾液をそっと掻き出すための道具です。つまり、汚れが現れる前に、予防的に行っていただきたい清掃グッズです。エアーウェイが汚れてから清掃するのではなく、オカリナを始めるときに準備していただき、汚れ予防のメンテナンスをするためのグッズなのです。勿論、当ブラシも万能の清掃グッズではありません。注意して使用しなければ、当ブラシでさえオカリナを疵付けてしまうことがあります。また、こまめに清掃しても、他の諸条件により、絶対にエアーウェイの汚れを防げる、というものではありません。

NIGHT オカリナ専用クリーニングブラシ 商品説明

NIGHT オカリナ専用ブラシ商品説明&ご注文

水洗いは推奨しません

エアーウェイの汚れに対して擦り洗いを推奨しない私どもは、擦り洗いによるカビの残骸を洗い流すために行う水洗いをする必要がないと考えます。必要性がない以上、水分吸収力がある素焼きのオカリナとはいえ、ダメージを与えるリスクがある水洗いを推奨しません。

また、水洗いを推奨しない主たる理由は「塗装が剥がれるリスクがあるから。」ではないと考えます。勿論、このようなリスクもあると思いますが、主たる理由は「素焼き」という素材の状態が、人の心を引きつける音色を生むものの、素材の耐性という観点では、繊細で脆いからです。

水分吸収力を持つ「素焼き」ではありますが、それは、演奏時の結露程度の水分に対しての見解です。私どもが行った実験も、演奏よりもダメージが少し強い状態を考えて、霧吹きで水を噴霧しました。しかし、「流水で洗う」という、より強度が高いと思われるダメージを付与するのは避けるべきと考えます。

しかし、次のような清掃方法は推奨します。それは、当ブラシをエタノール(アルコール)の消毒剤に浸し、エアーウェイに差し込んで内部を消毒する方法です。これは、私どもも、修理オカリナを試奏する際などに実際に行っています。私どもの目的は、衛生上の消毒ですが、エタノールは防カビ効果もあります。そして、揮発性のエタノールは、蒸発後に汚れになって残る心配もありません。

大切なこと。ご自分のオカリナが汚れてしまったら

少し悲しい気持ちになると思います。でも、オカリナが汚れる、ということは、一生懸命に練習した足跡です。ご自分を、褒めてあげてください。また、生徒さんのオカリナに汚れが見受けられた講師の皆様、エアーウェイに汚れが生じるほど一生懸命に練習してくださった生徒様を誇りとしていただきたいと思います。

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